珍しく、日付が変わる頃には寝ていた。
3日連続で歩きまくってたおかげで、自転車に最適化されていた脚はボロボロ。やりたかったことは全部やれたという満足感もあって、寝心地の悪いエコノミークラスの深夜バスでありながらすぐに眠りについていたのであった。
しかし、目覚め - つまり今日最初の記憶は、最悪だった。
サイレントモード(マナーモードと同義)に設定し、わざわざイヤホンを差し込んでいたにも関わらず、アラーム音は耳の中ではなく膝の上のiPhone本体からけたたましく鳴り出したのだ。
「ビックブリッヂの死闘」とかでなくデフォルトで入ってた黒電話の音に設定していてよかった…いやいやそうじゃなくて!
速攻で止めたものの、寝静まりかえっていた周りの乗客が皆起きだし、舌打ちも聞こえてきた。
気まずかった。あまりにも気まずかった。
設定していた時刻と到着時刻を考えれば、あと15分ほどの辛抱であるはずだった。しかし、20分経っても、40分経っても、1時間経っても着く気配がなかった。
交通渋滞のおかげで、バスが停車場についたのは予定よりも1時間近く遅い時刻だった。
「やれやれ、自分が居てはいけないかのような空気をあんなに長い間我慢しなければならなかったなんて」
「まあ、でも最後の方はどうでもいい感じになってたからいいのか」
「しかし、降りる乗客少ないなあ、ここから最終目的地までも結構長いのだね…起こしてしまった皆様、お許しください…」
「さて、自分は…脚が痛いけど歩かねば…とりあえず電車で帰って、すぐに出勤して、そして…」
そして午後2時ごろ、私は大学の生協でついでの昼食を済ませ、教務課にいた。
「すいません、今日で退学なので学生証を返却しにきました」
「あ、はい、どうぞ」
それはバスの運賃箱に乗車券を入れるかの如く、あっさりとした出来事だった。そこに目的地も印字されていたかもしれないが、とうに忘れた。
大きな解放感に一抹の寂しさが混じった気持ちを抱きながら、自分の脚で次へ進む。
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